失敗しない中古マンション選び
チェックポイント「見えないところ」
中古マンションは、新築よりも入手しやすい価格帯の物件が多くあります。自分らしい空間を作りあげたいという思いを実現するならば選択肢の一つとして考えるのも良いでしょう。内装や設備は古くても、スケルトンにして全面的に手を入れれば自分のイメージに合った素敵な空間も夢ではありません。
理想に近い物件探しのため、交通の便や周辺環境とマンションの立地、マンションの雰囲気、住戸のある階数(見晴らし、南向き、エレベータの有無)、住戸総数、部屋の広さ、予算などなど、いろいろな条件をクリアしてようやくたどり着いた物件。結論を出す前に、忘れてはならない確認すべき、もう一つのチェックポイントを加えてみてください。
そのチェックポイントの一つとは、「見えないところ」。大抵の場合は、古い内装や設備がある状態で物件を見せてもらうことになります。つまり、スケルトンの状態(内装、設備を全て取り払った躯体の状態)の確認はされていないことと思われます。「見えないところ」は「見えないから見ない」のと見えないけれど、できる限り情報を集め、推察し「少しでも見えるようにする」ことでは、大きく違ってきます。では、どのように見ていけば良いのでしょうか。
1:マンションの構造や耐震性を調べる。
「建設時期はいつなのか」
確認申請書(確認申請済証)の確認。建築基準法の耐震性の基準が1981年(昭和56年6月1日施行)を境に大きく変わり、従前に比べてより安全な建物を建てるための基準が設けられました。確認申請済証の日付がこの日付以降であることが一つの判断目安となるでしょう。「建築確認日」といわれるものです。建築確認は建物の工事に入る前に、その建築計画が建築基準法の規定に適合しているのかどうかを確認してもらうために申請(確認申請)を行い、「その建築計画が建築基準法の規定に適合しているので、この内容で建物を建てても良いですよ」という確認が取れると、確認申請済証が交付されます。建物が出来上がった竣工年月日ではないので間違えのないように。それから、この日付以前の建物でも新基準に適合する強度をもった設計をしている建物もあります。また、その逆にこの基準日以降でも施工の不具合も含め強度が不足している建物も存在するものと考えられます。よって、設計と施工が法令を遵守していることを前提にした上で、この基準日が判断の目安となると捉えてください。
2:マンションの健康状態を調べる。
「建物の傷み具合」
維持管理がなされていない建物は、建築基準法の基準に見合った強度で建設されていても、劣化状況により強度が低下していることも考えられます。住戸内の状況だけでなく、現状における共用部などのヒビや雨漏れなどの劣化状態、これまでの維持管理の状況、これからの維持管理(修繕計画、管理組合の運営状況)などの確認をお勧めいたします。
下記に一例ではありますが、中古マンションの一住戸をスケルトンにして発覚した構造上の不具合を掲載します。
鉄筋コンクリート造、14階建、築年数45年(1971年竣工)。
鉄筋へのコンクリート被り厚が不足しています。柱や梁の寸法も不均一。
住戸外の共用部を見ると、各階、各住戸の窓開口部の四隅にはビビが見受けられました。地震などの揺れに伴い発生したものと思われます。躯体の劣化が進行しないようビビ割れの修繕が必要と考えます。
構造の要となる柱と梁に多くのヒビが発生し、そのヒビ割れから白華した水シミや鉄筋の腐食による赤いサビ汁痕も見受けられました。コンクリートの劣化、剥離も進行しているものと考えられ、
早急な診断と対応が必要と考えます。