宅建業法改正:住宅診断報告書の説明は正しく伝わるのか?
住宅診断報告書の有無だけでは安心できない
宅地建物取引業法の改正内容の中に、『重要事項説明時に買主に対して建物状況調査を実施しているかどうか』を説明することとあります。
第一段階として、住宅診断の実施の有無を購入者へ伝えることまでに限定されています。
購入者と宅建業者とのやりとりを想定してみましょう。
診断済みの物件の場合の会話例
宅建業者「この物件は住宅診断をした建物ですから、安心して購入いただけますよ。」
購入者 「住宅診断って何なんですか? どういうところを診断して、何が大丈夫なのでしょうか?」
ここで、購入者が疑問を持ち住宅診断についての概要を質問することが大切です。『診断して報告書もついているし、業者も安心な建物だといっているから大丈夫だろう』という気持ちでなんとなく流してしまわないようにしましょう。
診断書が初めからついてるケースでは宅建業者の斡旋、もしくは利害関係のある診断業者によるものであることも考えられます。あってはならないことですが販売に都合の良い報告書であったり、報告書の内容を宅建業者がしっかりと理解していないケースも考えられます。
診断なしの物件の場合の会話例
宅建業者「この建物は住宅診断を行っていません。」
購入者 「住宅診断を行っていない建物はどんな状況なのでしょうか? 不具合はないのでしょうか?」
宅建業者「特に問題はないと思われますが、ご心配であれば診断業者を斡旋いたしますよ。」
診断業者の斡旋なので、形式的には宅建業者は介在しません。あくまでも診断業者と購入者双方の当事者間での取り決め契約のもとに診断業者は動くことになります。
診断業者への依頼や代金の支払いも購入者が負担することになるでしょう。一見すると中立性のある仕組みに思われます。
購入者の依頼を受けて診断業者は診断を行いますが、そもそも宅建業者から斡旋を受けた診断業者は、宅建業者の売買の妨げになるような不利な診断報告書を出すことができるのでしょうか。一方、実の契約依頼者である購入者に不誠実な診断報告ができるのでしょうか。
診断業者の立場は板挟みとなり、当たり障りのない報告書が挙げられてくることになるのではないかとも考えられます。
診断報告書をさらに診断する
次に、住宅診断を行った建物については、その結果を買主に説明し、確認をとらなければなりません。
『売買契約締結時には現況について売主と買主が相互に確認し、その内容を宅建業者から売主と買主に書面で交付すること』とあります。
宅建業者は、住宅診断そのものの概要について理解していることが大前提となります。しかしながら、その診断結果の説明を行わなければならない宅建業者の中には、建築には明るくない方々も多くいることも事実ではないかと思われます。
報告書を理解し、その不具合の程度や事象から建物の状況を購入者へ正確に伝えることができるのか、不安を感じます。ただただ報告書を読み上げるだけでは、建物診断の先にあるその不具合が持つ意味合いや対処方法までを、一般の方が理解を得ることは難しいのではないかとも思われます。
売買契約締結時に売主と買主が相互に確認することになっていますが、確認の仕方にも注意が必要と考えます。現地で双方に事象を確認してもらうのでしょうか。おそらくは、長い重要事項説明の書類の読み上げで意識が遠のいた頃、その延長線上で報告書を書面上の読み上げ確認に留まるものと推察されます。もし、現地で一つずつ事象の確認と説明が行われた場合、その現地確認と説明を行うのは建築の専門家ではない宅建業者なのでしょうか。報告書の内容に公平、中立性を持たせるためには現地確認と説明も住宅診断を行った者、もしくは第三者の住宅診断を行える者に委ねるのが良いのではないかと考えます。
建物の売買に関する専門家として、商品としての建物の現状をそのまま伝えることが宅建業者の役割ならば、建物の状況を踏み込んで具体的にわかりやすく説明することは建築の専門家である住宅診断実施者に役割を分担するほうが良いのではないでしょうか。購入者の立場からすれば、報告書の説明は住宅診断を実施した者が行うか、さらにはその報告書の中立性を確かめるためにも、住宅診断を行える『第三者』に診てもらい、説明を受け、疑問点をあげてもらうことが望ましいと考えます。
この法改正により契約時に双方注意すべき責任事項が明示されたことになります。つまり『契約時に状況について説明をしました。報告書の確認もしています。』と言った、相互確認と了承の上に契約が結ばれたということが明確になるということでもあります。契約ごとは平等の上に成り立つものですが、一般消費者にとっては知識、経験、情報など素地の部分で、もともと不利な関係にあるため、不具合が起きた時には、契約が封手になることも考えられます。対等な契約をするために、これまで以上にしっかりと重要事項、住宅診断の説明を受け、確認した上で契約を結ぶ必要性がでてきたとのではないでしょうか。
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