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2016-05-26

新築住宅の見極め その1

契約前に見極めたい

 購入する立場として、より良いものを適正な価格で手に入れたいと願います。キッチンや浴室などの仕様から建物の耐震性や断熱性などのグレードだけでなく、建物そのものが安心して暮らせる場所となりうるのか、いろいろな角度から精査し、購入を判断しなければなりません。

 ところが現実は、契約をする前に詳細を確認したくとも、建物の見えないところは保証や保険といったものでオブラートに包まれ、建物の表面上を見て判断することしかできません。どうしたら見た目に惑わされずに、見えにくい本質を見極めることができるのでしょうか。

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売りたい人たちを見る

 売りたい人の商品への思いを量る必要があります。

 いろいろな建物を見て廻ると、その建物に関係する多くの人たちと接することになります。建物ばかりを見てしまいがちですが、売りたい人(建築主、建主、売主)、建てた人(工事施工会社)、売ることを頼まれた人(販売担当会社)など、そこに関わる人たちを見逃してはなりません。その関係者と建物との親密度を見極めてみましょう。

 だれが一番売りたい人なのか、だれがこの建物を理解しているのか、関係性が深い人と接することで建物の見えないところが見えてくることがあります。知りたい、確認したいことは本当に売りたい人を見極めその人に聞かなければ、納得のいく言葉をみつけることはできないでしょう。

 その家での生活をイメージし、その家に親しみを持つことができるのか、一方的に家に対する確認作業をしているため、購入者は一抹の不安を抱くことになります。それはあなたに対して家が自ら語りかけ、良し悪しをアピールしてくる反応がないもどかしさからかもしれません。売る側はその代弁者となり、気に入ってもらえるよう一生懸命アピールをしてきます。しかし、その声は本当に家の代弁者としての声となっているのでしょうか。実のところお客様はあなた一人ではありません。売れる人に売れれば良いわけですから、あなたの思いに寄り添える人であるのかをしっかりと見極めなければなりません。

 また、その人が商品を売ることだけに終始した人だとしたら、発せられる言葉を信用し、決断をすることは難しくなるでしょう。売主の話や対応を客観的にみることでこの建物に関わるものから建物の見えない本質も見えてきます。そこに関わる販売員などの言動などにも注意して見る必要があります。

 住宅は多くの人が携わり、すべてが一連となり、それぞれの力をまとめた証が、ひとつの建物の形となるものです。販売員もその一連の最後を担う一人であり、そこから受けた印象は建物の本質に通じるものと言えるのではないでしょうか。どんなによく見える家でも、売れるように見栄えよく一時的に着飾っていることもあります。表層に惑わされず、見えていないその家の中身について疑問を抱き、再考することが重要です。単純に本当にこの人から買いたいと思えるのか、冷静に判断して建物そのものに信頼が置けるのかどうか、良い判断材料となることと考えます。

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心構えをみる

 もう少し、売りたい人を観察してみましょう。その場しのぎの応対や建物の良し悪しを保険や保証を全面に紹介するようならば注意が必要です。

 購入を考える立場ならば、当然いろいろな確認や質問は必要です。その内容が不具合の指摘に及ぶようなことは、事の大小に関わらず、ひとまず言及は避けた方が良いでしょう。一通り見て不具合や気になる箇所が集まったら『なぜ、売主は気が付かなかったの?』といった視点に置き換え、自己判断のための材料として、心に留めておきましょう。

 売主からすれば契約もしていないのに、その住宅に対していろいろと言われることは、決して面白いことではありません。また、購入するかどうかわからない人から指摘を受けても、まだお客様ではないので所詮は他人事です。その指摘が重要な問題性を含んでいたとしても、その時点で問題意識を抱くことはなく「購入契約が済んだら、引渡し前にしっかりと改善対応します。」と言った言葉でその場をやり過ごす場面もあるのではないでしょうか。

 より良く見せるアピールとともに、マイナス要因となる指摘をされる事がないようにあらかじめ不具合は確認し、準備をすることは売主として当然のことです。しかし、ベストな状態でお客様に提供し、お客様を受け入れることができない会社や担当者の体質は、すべてに置ける品質の管理面において質の低下となって現れます。また、それはその住宅に関わる人たちの考え方にも影響を与え、一つ一つの仕事に現れます。設計段階から施工に至るまで建物としての品質が管理され、自信を持って建てた建物であるならば、何も気構えることなく、気持ち良く見せることができるものではないでしょうか。

 「住宅瑕疵担保責任保険に入っていますから安心です。」といった、保険や保証で建物のグレードが確保されていることを聞かされるかもしれません。住宅瑕疵担保責任保険への加入は義務付けされたことではありますが、建物に対する責任を転嫁した、保険についての説明をされているようにも受け取れます。建物がしっかりと作られ、作った人たちがその仕事に責任を果たしているならば、本来保険は不要なものではないでしょうか。

 かつては保証や保険と言ったものに頼らず、仕事に誇りを持った人たちによりしっかりと品質が保たれ、暗黙の内に永年的に保証がなされていました。しかし、一部の不真面目な行いが粗悪な仕事となって露見するようになり、それを防ぐことと、第三者に建物の性能をわかりやすく伝える手段として保険や保証を全面に出す傾向があるようです。

 しかし、現実の問題として規定や規則ができるとそれに頼る傾向があるようです。責任を保険や保証に預けることで、工事の品質の低下を招き入れていることもあるように思われます。また、経験や習熟度が一定ではないこともあり施工精度や検査精度に幅があることも否めません。建主側も建物の保険や保証に頼りきる傾向が強くなり、施工側も検査さえ通れば良いといった風潮さえ見受けられます。その状況において保険や保証の価値はどこまで認め、信頼することができるものなのでしょうか。保険や保証をつけるには、その申請費用や検査費用、保証費用など余分に必要となり、建物の費用にも上乗せされることにもなります。セールストークでの保険や保証は予備要素として捉え、建物の本来の質を惑わされないよう見極める必要があります。

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ありのままをみる

 建物の外周や内部は清掃が行き届いていますか。もし自身を持って提供できる良い家であるならば、その思いは関係者の振る舞いや建物の状態として現れるモノです。

 『クリーニングの仕上がりが、建物の本質を表す』と考えます。

 完成して内覧を迎えているのに、ゴミの袋が置かれていた。部屋の中が埃っぽく、窓ガラスも汚れていた。ドアの枠や床にも傷があった。まだ作業が終わっていないのか、道具や材料が置かれたままの様子。案内した担当者は「引渡し前には全て整いますので、大丈夫ですよ。クリーニングも最後にもう一度入りますから綺麗になります。」と言った。

 確かにすぐに片付けて、クリーニングをすれば何事もなかったかのように見えるのかもしれない。そんな言葉に安心してはいけません。クリーニングを入れて残材を片付けたとしても、それでは済まされない潜在的な問題が、その建物やその会社に潜んでいる可能性があると考えます。まさにその担当者の言葉がその会社の日常を表しているのです。その建物の現場は工事の始まりから今日に至るまで、ずっとそのように、場当たり的な対応を繰り返してきたものと考えられます。全ての工程において管理がずさんなまま進行したことと推察されます。

 戸棚の中やユニットバスの天井内、床下などをみると日頃の清掃状態が少し見えます。また往来の激しくなる玄関や階段、掃出しサッシ周りに傷や汚れがないかみてみましょう。当然作業中も往来のあるところには、傷をつけないよう養生をして注意をはかります。傷や汚れがあったならば、そこへの細心の注意が足りていないことが見えてきます。表面的に見える箇所に注意が払えない現場が、隠れてしまうような箇所に注意が払われているとは考えられません。

 数々の現場で現場担当者と仕事の流れを客観的に見てきて言えることですが、最後のクリーニングの仕上がうまくいかない現場は仕事の内容に疑問が残ります。工事中に清掃や片付け、工程の管理がしっかりとなされ、現場に入る職人さんたちの仕事もしっかり行えた現場は、終わったあとにもその充実した空気感が建物に満ちています。当然、傷や汚れ、残材やゴミ、不具合が発生する箇所も少ない状態です。多くの人々の日々の心がけや仕事に取り組む姿勢などの積み重ねが、ありのままの姿として現れるのではないでしょうか。

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