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2016-07-08

住宅瑕疵担保責任保険って、必要?

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住宅瑕疵担保責任保険とは

 住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅に瑕疵があったとき、住宅取得者が少ない負担で瑕疵の修補が行えるよう、事業者に対して「保険への加入」、または「保証金の供託」にて、資力を確保するよう法律で義務付けられています。肝心の事業者が倒産してしまっていても、お引き渡しから10年以内に瑕疵が見つかった時に、保険金や保証金で修理費用をカバーしてくれるというものです。

 新築住宅を供給する事業者は住宅のお引き渡しから10年間の瑕疵保証責任が法律で義務付けられているため、保険は「必要」となります。

 住宅瑕疵担保責任の範囲と保険制度、住宅瑕疵担保履行法について詳しくは、一般財団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のHPをご確認ください。

一般財団法人住宅瑕疵担保責任保険協会 http://kashihoken.or.jp/kashihoken/

 ではなぜ、「住宅瑕疵担保責任保険って、必要?」などとあえて問いかけをしているのか。それは、誰のための、何のために入る保険なのか、内容を押さえておく必要があるからです。

 

誰のための、何のために入る保険なの?

保険の対象となる瑕疵担保責任の範囲について

 この保険で保証されるのは、住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分に限られるということについて押さえておきましょう。

住宅の構造耐力上主要な部分とは・・・住宅の基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋交、方杖、火打材、その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版、または横架材(はり、桁その他これに類するものをいう)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧または地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものとする。と規定されています。

→出来上がった建物の内装材や外装材で隠れてしまう建物の見えない内部の大半がこの部分に相当します。

いわば建物を支える骨組みそのものを対象とし、そこが変形したり、割れたり、施工が不十分であったりといった不具合の瑕疵が認められた場合において、補修等のための保険金の支払いが行われるということになります。

雨水の侵入を防止する部分とは・・・住宅の屋根若しくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸、枠、その他の建具。雨水を排除するため住宅に設けられる排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部または屋内にある部分。と規定されています。

雨水が外部から建物内部に浸水しないように屋根や外壁の防水性とその部分に開けられた窓などの開口部の防水性について、発生した不具合の瑕疵が認められた場合において、補修等のための保険金の支払いが行われるということになります。

 

保険は適用されるのか?

 不具合があったからといってすぐに保証が認められるわけではなく、調査の上でその不具合が保険の対象範囲内を起因とした不具合であることが認められる必要があります。地盤の沈下によって建物が傾いた場合や基礎にヒビが入った場合などには、対象外となることが考えられます。また、新築当初は屋根に設置されていなかった太陽光パネルを新設したことで起きた雨漏りも対象外となるものと考えられます。雨漏れによって家財に損害を受けた場合にも対象外となるものと考えます。保険の適用範囲が限定されていることに注意しなければなりません。また、原則として瑕疵による不具合箇所の補修に対する保険金の支払いとなるため、その補修に伴う関連工事がどこまで認められるか、また、工事以外の調査費用や仮住まい、引越し代金など関連費用がどこまで含まれるのか、どのくらいの金額が支払われるのかを事前に確認する必要があります。

保険に入ると安心?

 先に『住宅の構造耐力上主要な部分とは・・・』で記したとおり、構造耐力上主要な部分に不具合が起きた時、その不具合を補修することは現実としては難しいことがおわかり頂けることと思われます。柱や梁、基礎、壁の中に隠れてしまう箇所が原因で不具合が起きた時、生活をしている状況において内装を剥がして、どこまで現実として補修できるものでしょうか。10年以内に構造耐力上主要な部分に不具合が起こること自体、瑕疵どころの話ではないように思えます。これは瑕疵というよりは、人為的に行われた過失のある欠陥住宅ではないでしょうか。不具合により生活のペースは崩され、補修のために時間を都合・協力し、建物の不具合により物質的なダメージを受けただけではなく、それ以外にも関連して精神的に負担を強いられることを考えたら、直してもらうことより購入代金を返金してもらいたいといった、思いが湧き出るのではないでしょうか。『住宅の構造耐力上主要な部分』における瑕疵の場合、保険を使って補修することだけですべてが解決されることではなく、損害賠償の問題にも発展しかねないと考えます。

 10年間の瑕疵担保責任を義務付けがされた当初、これまで真面目に普通に仕事をしてきた工務店や大工さん、その他の職人さん、設計事務所の人たちからは、

「よくわからない法律ができたね。」と疑問を抱く方々が多く見受けられました。

「責任をもってこれまで仕事をやってきたし、手をかけた家は一生面倒みるつもりでやっているからね。そうやって信頼を重ねてきたからね。」

「そんな保険で保証しなければならないようなはずかしい仕事はしないよ。」

義務付けされたとは言え、よその不始末に付き合わされ迷惑なことだといった話をよく耳にしました。また、

「義務付けされると間接的にでも余計な負担がお客さんにかかるんだろうね。」

といった心配の声も聞かれました。

知らないうちに保険料を負担

 事業者には保険への加入か保証金の供託が義務付けられていますが、大抵の場合、物件ごとに保険への加入申込を事業者が行うケースが多いものと考えます。そして、その保険料の負担を住宅取得者に求める業者が多いことも事実としてあります。住宅価格や工事代金に含まれてしまい、住宅取得者は認識しないまま、間接的に負担をしていることがあります。住宅取得者は最低限、瑕疵担保責任保険の代金は他の見積と項目を分けて出してもらい、説明を受け、瑕疵担保責任保険の加入と保険料の支払いを負担することを認識し、納得する必要があるものと考えます。

保険が不安をあおる

 住宅取得者にとっては、事業者や工事会社に信頼を寄せることができたとしても、一抹の不安から瑕疵が起きた場合を考え保険に頼りたくなる気持ちも理解いたします。住宅に関わる不穏なニュースを耳にしていれば、住宅への不安を抱かざる得ない世相でもあります。そのようなご時世においてイメージすることも難しいことかもしれませんが、不具合のないしっかりとした建物であれば、保険は不要なものとも考えられます。まずは、保険に頼らないしっかりとした住宅に出会うことへの努力も必要ではないでしょうか。

保険のいらない住宅

 保険の対象となる内容は、修繕が難儀な構造上主要な部分と被害が発覚しにくい雨水の侵入を防止する部分です。これらの大部分は、設計と工事と施工管理が本来の仕事をしていれば未然に防げる内容です。未然に防ぐ措置がなされた上での保険ならばよいのですが、雨漏れが起きた住宅の瑕疵保険による補修工事に立ちあうと、設計や施工上で既に不具合は発覚していることがわかります。『検討がなされた設計』と『しっかりとした職人による施工』と『工事の計画と実施を厳しくチェックし、見ることができる施工管理』によって、不具合は未然に防ぐことはできるのです。

 少し甘い見方かもしれませんが、人間が作り上げるものなので万全を期していてもチョットしたミスは起こりかねないことを踏まえた時、そのミスによっておきた不具合をカバーするために保険への加入は有用なことかもしれません。ただ、万全を期した上で起こる不具合は比較的軽微なものであり、設計段階や施工段階で防げるはずの不具合を回避しなかったものによる不具合が招く被害との差は大きく違うことも明らかです。

保険に責任を委ねる事業者

 きれいごとと取られる方もいらっしゃるかもしれませんが、あえて自らのハードルを上げて提言させていただきます。「10年以内に大きな不具合が発覚するような仕事は、あってはならないこと」として、仕事には取り組み続けたいと考えています。

 おかしな話ですが、保険会社も保険を付けても良い建物かどうかを検査します。つまり、保険が使われることのない建物として保険を付けているのです。しかし、購入時に『不具合を起こす装置』が組み込まれた状態の建物にでも保険がついていることもあるのです。住宅取得者にとって、この保険の対象範囲と内容は事後のよりどころにはなりますが、保険があるからその住宅が安心といったものではありません。

 不具合を起こした事業者は、その不具合の補修費を保険でまかなえます。この保険に入って安心するのはそんな不誠実な事業者ではないでしょうか。本来ならば、不具合を起こした事業者側が責任を感じ反省しなければならないことにもかかわらず、不具合対処への身銭を切る必要がないためか、同一事業者で不具合を重ねて起こす建物が減らない実情が起きています。瑕疵担保責任保険制度がおもわしくない側面を育んでいるようにも思えます。「保険でなんとかなる」といった始めから責任を保険に委ねた仕事をする傾向が多く見受けられます。「自分の仕事に保険かけて動くものじゃない!」といった戒めの言葉が聞こえてくるようです。瑕疵担保責任保険の保険適用対象による不具合はあってはならないこととした上で、住宅取得者の立場を保護する観点から、運悪く不良物件を取得してしまった時のもしものための保険ならば、保険料は事業者の負担することが妥当なのではないでしょうか。事業者がその保険に甘んじるかどうかは住宅プロのモラルの問題として残りますが、購入する住宅に明るくない、住宅弱者の立場の住宅取得者が負担するのは少なくとも違うように感じます。

 

 分譲建売住宅の購入、契約前に建物の検査をすることで、瑕疵に関わる不具合を抱えた建物かどうかをある程度見極めることが可能です。引き渡しを受けた後、夢のある新生活をスタートしたのに不具合が発覚した場合、予定していなかったことで時間と精神的な負担によりブレーキをかけられないよう事前に対策を取ることが重要と考えます。

 注文住宅においても、契約時、着工前には設計図面と見積もりのチェックを行い、検討が十分なされているか事前に確認すること、工事がはじまればその工事施工が正しく行われているかを確認することで、不具合の要因を未然に取り除き、瑕疵・欠陥を防ぐことができます。

P+(Pプラス)では購入前の『住宅診断・検査』と『図面・見積りチェック』のサービスをご用意しております。これがなによりの保険となることと考え、住宅取得者のサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。

 

 

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